ここ数年、潰瘍性大腸炎の患者数が年間約5000人を超える勢いで増加しています。 潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患で、下痢や血便、腹痛、発熱などの症状を伴い、原因として、腸内細菌の関与や自己免疫異常、食生活やストレスなどの関与が示唆されていますが、詳細は未だ明らかになっていません。 潰瘍性大腸炎は症例数が少なく、原因不明、治療法が確立していないなどの理由から、治療費や研究費を国が一部負担する特定疾患に指定されています。厚生労働省が発表した潰瘍性大腸炎の医療受給者証の交付者数は、2009年3月末時点で10万4721人に上り、ここ数年は年間約9000人を超える勢いで増加していますので(上図)、2011年3月末現在では既に12万5000人に至っているものと考えられます。
患者の初発年齢も変わりつつあり、従来、潰瘍性大腸炎の初発患者は20歳代から30歳代に多いとされてきましたが、最近では、40歳代から60歳代にかけた中高年層での初発患者の増加や15歳未満の小児での患者が増えてきています。 中高年患者の増加の理由は不明とされていますが、背景には、職場や家庭でのストレスが疑われており、離婚率の上昇や景気低迷によるリストラの増加など、社会情勢との関連が指摘されています。
これら、現在行われている治療には副腎皮質ホルモン剤に代表されるような多くの副作用が伴います。また、費用面においても、全て治療法に保険が適用されているわけではなく、患者の皆様には大きな負担が強いられています。
1976年に43種類の漢方処方が医療用漢方製剤(ツムラ)として薬価基準に初めて収載されてから、現在では148種類の漢方製剤が日本の薬価基準に収載されています。これら保険のきく漢方薬の増加に伴い、漢方薬を用いる医師の数も増え、現在では、7割以上の医師が何らかの形で漢方薬を診療で使っているといわれています。
日本では平成20年から「漢方内科」や「漢方皮膚科」など、「漢方」を診療科目として標榜できるようになり、漢方専門医が活躍しやすくなりました。しかしながら、漢方を本格的に学び、使いこなしている医師はまだまだ少ないのが日本の現状です。その原因は、今までの日本の医科大学・医学部における漢方医学教育の不備にありました。 2001年4月に北里大学大学院に東洋医学講座が開設されるまでは、富山医科大学の和漢診療学講座が唯一大学で行われていた漢方医学教育で、その他には全くありませんでした。 現在では80校すべての医科大学・医学部に漢方講座が設けられるようになりましたが、内容や時間数も少なく、漢方医学の基礎のレベルまでしかカバーできません。 本格的に漢方を学ぼうとする場合は、個人的に漢方の専門家や経験者に教えを請うか、国内の漢方薬の研究会や中国の中医薬大学に所属し勉強するなどの手段を取らなければなりません。
漢方薬のほとんどは、今から2000年近くも昔に書かれた中国の「傷寒論(しょうかんろん)」や「金匱要略(きんきようりゃく)」といった古代の医書に処方が記載されているものですが、この古いはずの漢方薬にも“新薬”と呼ぶに相応しい現代に作られた大変効果のある漢方薬がいくつかあります。 これらは、心臓病をはじめ、肝臓病、癌、潰瘍性大腸炎などの難病に対して開発された、現代医学的な評価検証に基づくエビデンスもしっかりした漢方の新薬ですが、残念なことに、これらを日本の患者の方々が使用することは日本の薬事法では認められておりません。