一つの新薬の開発には数百億から一千億円もの研究開発資金がかかるといわれています。新薬開発で候補となった物質は、現状ではそのほとんどが途中でふるい落とされてしまい、実際に医薬品になるのはわずか8%にすぎないといわれています。
開発中止に至る主な原因は、
「効き目が確認できない」
「飲んだ物質の血液中や組織中での濃度が上がらず、効果が期待できない」
「毒性が強い」
などですが、その多くは三つ目の「毒性が強い」、つまり「目的とする効果があっても、副作用が強すぎて使い物にならない」からです。
このように莫大な研究開発費を投じてなされる新薬開発ですが、「副作用がほとんど無く、期待通りに十分な効果を発揮する」新薬の開発は、実際にところ皆無に近い現状となっているようです。
では、なぜそのような結果になるのでしょうか?
過去、新薬と呼ばれるものは、大半が生薬など薬草に含まれる有効成分を単離(混合物から特定の化合物を純粋な物質として分離し取り出すこと)したもの、あるいは、その誘導体でした。
鎮痛解熱薬として有名な「アスピリン」は柳の樹皮に含まれる成分から、
抗生物質の「ペニシリン」は青カビから、
臓器移植には欠かせない免疫抑制剤「タクロリムス」は日本の茨城県にある筑波山の土中に生息する菌から発見されました。
また、最近のところでは、抗インフルエンザ薬として「タミフル」が大変有名ですが、実はこの「タミフル」も香辛料としてよく知られている八角(スターアニス:シキミ科の植物の果実)の成分から作られたものです。 |